未来主義の宣言十一箇条
一、 吾等 の歌わんと欲する所は危険を愛する情、威力と冒険とを常にする俗に 外 ならず。
二、 吾等の詩の主なる要素は胆力、無畏、反抗なり。
三、従来詩の尊重する所は思惟に富める不動、感奮 及 睡眠なりき。 吾等は 之 に反して攻撃、熱ある不眠、 奔馳 、死を賭する跳躍、 掌 を 以 てすると 拳 を以てするとの殴打を、詩として取り扱わんとす。
四、吾等は世界に一の美なるものの加わりたることを主張す。 而 してその美なるものの 速 の美なることを主張す。広き噴出管の蛇の如く毒気を吐き行く競争自働車、 銃口を 出 でし弾丸の如くはためきつつ飛び行く自働車は Samothrake の勝利女神より美なり。
五、大世界の空間を 奔 れる地球の上を、 箭 の如くに奔ることを理想として、手に車上の 柁機 を取れる男子は、吾等の崇拝する所なり。
六、詩人たるものはその熱心、 光彩、喜捨を以てして、世界根本の元素(四大)に対する感激を大にすることに全力を傾注すべし。
七、美は 唯 闘 に在り。 苟 も著作品にして攻撃的 (Aggressivo)性質を帯びざる 限 は 安 んぞ傑作たることを得む。詩とは不知諸力に対する暴力的攻撃にして、不知諸力はこれによりて人類の用に供せらるるに至るものなり。
八、吾等は歴世紀の岬の突角に立てり。何故に吾等は不可能の深秘門を開かんとするに当りて、背後を顧みんとするか。 時間と空間とは死したり。而して吾等は既に絶待に住せり。 吾等が同時にあらゆる処に在るべき無窮の速を成就しはその証なり。
九、吾等の頌せんと欲する所は 戦 なり。戦は唯一なる世界の衛生法なり。又軍人主義なり。自由の為めに戦う戦士の 做 し出す破壊なり。吾等は人の之が為めに 肯 て死する諸理想を讃美す。又女子に対する 軽侮 を讃美す。
十、吾等は博物館、図書館及あらゆる種類の学士会院を破壊せんと欲す。 吾等は道徳主義(Moralismo) 女性主義(Femininismo)及あらゆる 因循 なる 法懦 を攻撃す。
十一、吾等の詩は之を労働 若 くは遊戯若くは反抗の為めに活動せる大多数に献ぜんと欲す。現代諸大国の革命の多色多声なる潮流は吾等の歌わんと欲する所なり。 誠 に主なる詩料を列記せん 乎 。電灯に照されたる武器工場及その他の工場のさわがしき夜業、 烟 を吐く鉄の龍蛇を 嚥下 して 饜 くことなき停車場、 烟突 より 騰 る烟柱の天を摩する工場、刀の如く目にかがやきて大河の上に 横 れる巨人の体操者に類する 橋梁 、地平線を 嗅 ぐ奇怪なる船舶、鋼鉄の大馬の如く軌道の上に 足踏 する腹大なる機関車、 螺旋 の古風旗の如く風にきしめく風船の目くるめく飛行等 是 なり。