LITERATURE

無意識の幻想曲[抜粋]

D・H・ロレンス

深瀬基寛訳

Published in 1922|Archived in January 13th, 2024

Image: Edvard Munch, “The Kiss IV”, 1902.

CONTENTS

TEXT

EXPLANATORY|SPECIAL NOTE

旧字・旧仮名遣いは現代的な表記に改めた。
傍点による強調は太字に統一した。
底本の行頭の二字下げ・三文字下げは二字上げ・三文字上げに変えた。

BIBLIOGRAPHY

著者:D・H・ロレンス(1885 - 1930)訳者:深瀬基寛
題名:無意識の幻想曲[抜粋]原題:無意識の幻想曲(第15章「Lower Self」より)
初出:1922年(Thomas Seltzer, Inc.)
出典:『夢を孕む單獨者』(筑摩書房。1956年。174-175ページ)
原本:“Fantasia of the Unconscious”(Thomas Seltzer, Inc.。1922年。273、277ページ)

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われわれは、もとの根元的なものに向かって分解する。われわれは、上層意識、精神、視覚、言語から出て、暗い、生きた血の、深く、巨大な、動揺する意識の中に向かって溶解する。性の最後の刹那わたしは、高く盛り上血の強力な一つの波にすぎず、それほどっとうち寄せて、今一つの個体の中にある反応する海に溶けこむことを求める。その刹那わたしは個体の血の海になりきっているのだが、その同じ刹那に女もまた個体の血の海であり、わたしの海が高まって女の海と純粋の接触ができれば、そのときわれわれのどちらもが、われわれの一体性と意識との大洋の中で、われわれの完全無欠なより深い無限の世界、われわれの深く充実しきった存在に入るのである。
 

* * *

 
性の関係においても同様である。そこに生まれる結果は三重である。第一は、純粋な感覚と真実の電気とする。次に、どちらの側でも血の全く新しい状態が生まれる。更に続いて解放が起こる。