親愛なるミュレール
私はあなたの親切なる申し出をことごとく尊重する。
確かに私の役に立つようにという真実な申し出から出たものであろうが、私にはお受けできない、現在は極めて逆境にあることは事実だが、先頃ドクトル・ガシェが私に言ったように、私の友人たちの助けで切り抜けてゆくことができるだろうと思う。
お手紙をいただいたときルグラン(1)のところでお買いになった絵について、手紙を書くつもりでした。
この絵はあなたが私に都合してくだすった100フランの前借りを、返済するために私がお渡しした絵よりも、はるかに価値があるものです。8号の2枚に相当します。
もしそれをお求めになりたいのならこの絵はその100フランに当たることになります。
さもなければ、ルグランにそれをお返し願いたいものです。
私は仕事ができるようになったら、すぐ約束通り8号を2枚差し上げるよう、とりいそぎ計らうことにします。
(1)商事代理人、シスレーとルノアールの友人。印象派の作品に深く関心を持ち、美術家ことにシスレー、ルノアールにはずいぶん役に立った。当時パリの画家の街であったラフィット通りに住んでいたが、やがてコンフラン・サント・オノニーヌ(セーヌ・エ・オアズ)に隠退した。