PAINTING

ミュレールへの手紙

アルフレッド・シスレー

式場隆三郎訳

Published in February 15th, 1878|Archived in February 15th, 2024

Image: Alfred Sisley, “Chemin à la lisière d’un bois”, Unknown.

EXPLANATORY|SPECIAL NOTE

本稿は、ポール・ルイス・ガシェが編んだ『印象派画家の手紙』から、アルフレッド・シスレーがウジェーヌ・ミュレールに宛てた手紙を、訳注も含めて収録したものである。
ARCHIVE編集部による(とくに人名に関する)補足は〔 〕内に入れた。
旧字・旧仮名遣い・地名や人名、年号、一部漢字・表現は、最小限度の範囲で現代的な表記に改め、一部漢字にルビを振った。
底本の行頭の字下げは上げた。

BIBLIOGRAPHY

著者:アルフレッド・シスレー(1839 - 1899)訳者:式場隆三郎
題名:ミュレールへの手紙原題:「シスレーの手紙」
初出:1878年2月15日
出典:『印象派画家の手紙』(耕進社。1935年。125-127ページ)

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親愛なるミュレール
 
私はあなたの親切なる申し出をことごとく尊重する。
 
確かに私の役に立つようにという真実な申し出から出たものであろうが、私にはお受けできない、現在は極めて逆境にあることは事実だが、先頃ドクトル・ガシェが私に言ったように、私の友人たちの助けで切り抜けてゆくことができるだろうと思う。
 
お手紙をいただいたときルグラン(1)のところでお買いになった絵について、手紙を書くつもりでした。
 
この絵はあなたが私に都合してくだすった100フランの前借りを、返済するために私がお渡しした絵よりも、はるかに価値があるものです。8号の2枚に相当します。
 
もしそれをお求めになりたいのならこの絵はその100フランに当たることになります。
 
さもなければ、ルグランにそれをお返し願いたいものです。
 
私は仕事ができるようになったら、すぐ約束通り8号を2枚差し上げるよう、とりいそぎ計らうことにします。

あなたの   
シスレー
1878年2月15日 セーヴルにて
 

(1)商事代理人、シスレーとルノアールの友人。印象派の作品に深く関心を持ち、美術家ことにシスレー、ルノアールにはずいぶん役に立った。当時パリの画家の街であったラフィット通りに住んでいたが、やがてコンフラン・サント・オノニーヌ(セーヌ・エ・オアズ)に隠退した。