MUSIC

ドビュッシーについて

ジャック・イベール

小松清訳

Published in September 1948|Archived in May 17th, 2024

Image: Leon Bakst, "Nizhinsky in L'après-midi d'un faune", 1912.

CONTENTS

TEXT

EXPLANATORY|SPECIAL NOTE

本稿は、ジャック・イベールが『シンフォニー』誌に寄せた寄稿の全文を収録したものである。当時日本で開催されたドビュッシー演奏会に寄せたメッセージだと思われるが、当該演奏会は同定できなかった。
旧字・旧仮名遣い・旧語は現代的な表記・表現に改めた。
底本の行頭の字下げは上げた。

BIBLIOGRAPHY

著者:ジャック・イベール(1890 - 1962)訳者:小松清
題名:ドビュッシーについて原題:ドビュッシー祭へのメッセージ
出典:『シンフォニー 第九輯』(東寶音樂協會。1948年9月。1ページ)

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「音楽は決して耳を不快にするものであってはいけない。耳を魅惑し、つねに音楽として止まっていなければならない」とモーツァルトは言いました。
 
この言葉を、彼流に言い直してドビュッシーはどこかに書いています。「音楽は快楽を与えることを謙虚に求めなければならない」と。彼はさらに付け加えて言いました。「美は感じ得られるものでなくてはならない。吹きすぎつつ我々に世界の物語を語る風の忠告以外には何人の忠告も聞いてはいけない。」
 
そこから彼が教訓を汲み取ったこの物語によって、この天才的作曲家はすすんでその心を打ち明け、我々のもろもろの夢の神秘な要求を満足させてくれるのです。
 
夢を開くこの新しい鍵を提供することによって、ドビュッシーは清浄無垢な一個の宇宙を音楽家たちに発見させるのです。この宇宙のなかでは、強制や人工や衒学は永久に追放されております。
 
時代遅れのロマン主義の鎖から解放されて、音楽は今度ひらすらにその好むところに走っていくでありましょう。赤裸々になって、溌剌として、さやけく、あらゆる既成の修辞学から脱け出し、しばし遠ざかっていた真理への途をふたたび発見しようと熱望しつつ走っていくでありましょう。
 
フランスの音楽家クロード・ドビュッシーは、この世界に平和と協力と愛のメッセージを持ってきたのであります。今日、その逝去三十年記念祭を挙行することによりまして、現代は彼に対して感謝と不変の信頼の念とを示そうとするのであります。

ジャック・イベール