初恋をめぐる手紙
〔コンスタンツィヤ・グワコトコフスカについて|ティトゥス・ヴォイチェホフスキ宛の手紙〕
1通目
僕がウィーンに住むほうが有益だと主張するのは、前に君に書き送ったことのあるブラヘトカ嬢のことを考えているのだと、決して思わないでくれたまえ。僕はずっと前に、ちゃんとほかに好きな人を見つけてあるんだから。——もしかすると不幸な結果に終わるかもしれないが、僕は忠実に、誠意をもって崇拝している。もう六ヶ月もたつのに、僕はまだ一度も言葉をかわしたことがない。その実、毎晩のように夢に見るのだ。彼女のことを考えている間に、僕はコンチェルトのアダージョを作曲した。きょうはまた、朝早くワルツを書いたよ。この手紙に同封したのがそれだ。
2通目
喜びと悲しみをともにする者のいないことは悲しい。苦しみをともに感じてくれる者も、心の不満を打ち明ける者も、僕にはいないのだ。
3通目
神よ、私のために決して彼女を苦しめることがありませんように! 彼女の心が安らかでありますように。また彼女に伝えてください、私が自分の心臓が脈打っている間、彼女を愛することを止めないということを。また私が死んだら、私の灰を彼女の足元に撒いてくれますように。
4通目
僕には特別に魅力を感じる土地というものはないが、とにかくワルシャワに長くとどまるつもりはない。僕をここに引きとめるのは何か愛の対象があるからだと、君は思うかも知れないが、もしそうだったら君は、ほかの多くの人と同様、まちがっている。少なくとも僕自身に関するかぎり、僕はどんな犠牲でも忍ぶ覚悟であることを、君に断言することができるのだ。僕は愛を感じている。けれども僕は、この不幸な情熱を、ここ何年かの間、胸の奥に秘めておかなければならないのだ。……僕はピアノ、クラリネット、バスーン、フレンチホルン、フルートで、シュポーアの五重奏を演奏したよ。これは非常に美しい作品だが、ただピアノだけは、なかなか弾きにくいように思う。……七時の開演だというのに、僕たちは十一時になってやっと始めたという始末だ。僕はぐっすり眠らなかったと言ったら、たぶん君は意外に思うだろうが、僕がいつまでも目をさましていたというのには、りっぱな理由があるのだ。というのは、お客の中に美しい娘がいて、それが僕に意中の人をはっきりと思い起こさせたからだ。まあちょっと想像してみてくれたまえ! 僕は朝の三時までそこにいたのだよ。僕は今週、ウィーンへたとうと思っていたのだが、とうとうその考えを中止にしたよ——理由は君も察してくれるだろう。